みんなの場所、じぶんの居場所
「誰の場所でもないのに、自然にみんなが集まってくる。それがここのおもしろさ」。カレー屋「せかいのまんなか」の浦林真大(うらばやしまさひろ)さんは、2018年12月から鳥取駅前の風紋広場での営業をスタート。思い描くのは、公共空間という〝みんなの場所〟で、それぞれがやりたいことをできる〝自分の居場所〟づくり。日常的なマーケットの「ハレハレケケケ市場」も主催し、にぎわいをつくっている。
自分の生き方を探したインドでの経験
教員だった祖父の影響もあり、教育の道を目指しながらも大学生の時に壁にぶち当たった。「何のために勉強をするのか、自分の中に伝えたいことがなくて愕然とした。だからまず自分が楽しいと思うことをやってみました」と海外放浪の旅へ。中でも、印象的だったのがインドだった。
現地でラクダを買い、旅をしてみようと決めた。騙されることもあったり、反対に人の温かさにも触れたり…。もがきながら600キロを歩き切った。
「これをして何になるかなんてわからなかった。はっきり言って何にもならなかった。でも、やってみようと思って挑戦し、それをやり切った時に喜びで足が震えたんです。自分が考え、動くことができれば、どこに行ってもここが世界の真ん中だと思えた」
そんな喜びを感じる生き方をしようと、その言葉を店名に決めた。
露店のカレー屋を開業
忘れられない光景がある。騙されて人間不信になっていた時に入ったインドのチャイ屋でのこと。自然と人が集まり、ゆるく繋がっている感覚がとても心地よかった。「こんな場所が日本でも作れたらいいなぁ」。その思いが原点となり、2018年の夏に浜村の国道9号沿いでカレー屋台を出したのが最初だった。
「やってみたものの、海の近くで風が強く、砂は入るし、寒くなってとても厳しかった。そんな時に友人から風紋広場のことを聞いたんです。出店料も安いし、店を始めやすい環境だと思いました。」 暴風でテントが崩壊するなど天候に泣かされたこともあったが、徐々にお客さんや一緒に出店してくれる仲間も増えた。市内数カ所での移動販売もしながら、週末に風紋広場で店を出す流れがようやく定着してきた。
大人が楽しんでいる世の中がいい
約1年前から日常的な市場「ハレハレケケケ市場」が開かれ、毎週土曜日はいつもよりにぎやかな風紋広場になる。「3年前からやりたいことを表現できる場として『BOKUGOTO』というイベントを年1回開いていて、これがもっと日常の延長としてできたりしたらいいなと思って始めました」という。
10店舗ほどが登録し、希望日に店を出す。パン屋、古道具屋、おでん屋、本屋…。仕事とは違うことをしたり、小さく店を始めたり、趣味の延長でやってみたり。「初期投資も少なく済むし、いろんな理由で自分には無理と思う人にも、何かのきっかけになれば」と話す。
「先生になろうとしていた大学生の頃、大人になることがつまらないことに感じた。でも、今は子どもたちにとって大人が楽しんでいることが一番の教育かもしれないと思うんです。だから大人が自分のやりたいことを楽しんでいる、まず風紋広場がそんな場になっていったらいいなと思っています」
▲ハレハレケケケ市場
カレー屋を始めて4年。最近ではクラフトビール店と協力したイベントを企画するなど、浦林さん自身もますます楽しいと思うことをやり、その輪を広げている。
せかいのまんなか
月~水… 鳥取市内を中心に瞬間移動カレー(持ち帰りカレールー移動販売)
金… 11:30~14:00 風紋広場にて営業
土… 11:00~ ハレハレケケケ市場に出店@風紋広場
日… 各地でイベント等への出店
※詳しい営業スケジュールは浦林さんのSNSで公開。天候等により営業状況が変動します。
Facebook: 浦林 真大
Instagram: masaurabayashi
写真撮影・文/藤田和俊(※写真撮影時のみマスクを外していただき、感染症対策の上取材を行っています。)
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