まちのシンボル、新たな一歩

「百貨店は、街の顔になるべきもの」。今年9月、鳥取駅前の百貨店は長年親しまれてきた『鳥取大丸』から、85年前の設立当初の名前でもある『丸由百貨店』に変わった。その変革期を企画担当として支えるのは、自身もUターンして新天地での挑戦を続ける高嶋優さん。「自分たちらしさを模索しながら、自分たちも楽しむことで地域との距離が近くなれば。そうやって鳥取らしい百貨店になっていきたい」。まちのシンボルの、新たな挑戦が始まった。

「大丸」から「丸由」へ


「鳥取大丸から丸由に変わることは数年前から決まっていて、少しずつ変革をしてきました」。2019年からの全体改装に伴い、5階に製菓工房などを備えた『トットリプレイス』や飲食店の入れ替え、屋上の活性化など若い年齢層も狙ったリニューアルを行ってきた。

 新たにスタートを切った丸由百貨店のキャッチコピーは『鳥取らしく、私らしく、OYOUらしく』。「全国でも単独百貨店がある地域は珍しく、だからこそ、その街にしかないものにならないといけません。鳥取のみなさんに愛していただく店はどういう店なのかを考え続けたい」と話す。

 ロゴも、紙袋も、まっさらな気持ちを表す白を基調とした新デザインに。制服も新しくなった。「積み重ねてきた文化をより良いものにしていくために、社内制度や備品など社内からも変わろうとしているところ。社員の表情も変わってきた気がします」と話す笑顔に、手応えを感じさせる。

丸由百貨店 / 株式会社丸由 事業統括部営業企画課

高嶋 優(たかしま ゆう)さん

「好き」を形にしていく


高嶋さんは1年半前に入社。東京の商船会社で現場監督や営業などをしていたが、地元の鳥取市に戻ろうと考えていたところ、鳥取大丸(当時)の企画人員の募集を見つけた。

 「前職でも新しいプロジェクトを考えることや新規営業をやっていて、まずは、自分の好きなことから切り口を見つけようと思いました」。中途入社で固定観念がない分、自由な発想で動こうと決め、趣味のアウトドアを活かした販売会や屋上でのサウナイベントを開催。すると、文房具好きの女性社員がマスキングテープの企画を立てるなど、自然と企画課内でも「好き」を形にする流れが出てきたという。

 「長年物産展を担当してきた社員が『俺は一流を知っているから任せろ』と気合いが入ったり、まずは自分たちが楽しんだり、得意とすることをどんどんやっていきたい。やっている側の好きという気持ちや楽しんでいる様子は、きっとお客様にも伝わると思っています」

地域との距離感を縮める


地域に愛される百貨店に−。その思いからだろう。取材中、しきりに口にしたのは「地域との距離感を縮めたい」という言葉。3年前に開設したSNSでは、年1回のアンケートでイベントや出店の要望を聞いている。

 「リクエストいただいたお店の出店が実現すれば『私の声が届いたのかな』と思ってもらえる。その距離感が良くて、できるだけこちらも応えていきたいです」

 実績のなかった店でもどんどん開拓。都心部でも人気の雑貨店「中川政七商店」に声をかけ、日本初の短期型出店に成功した。今や他の地方都市でもその形が広まったが、その走りとなったのが鳥取だった。

 楽しみながら距離を縮めるのが高嶋流。「地下食品フロアの名前を募集したら766件もの応募をいただき、こんなに反響があるとは思いませんでした」と嬉しそう。オープニングイベントでは、鳥取駅周辺の企業の参加を募って開催したのど自慢大会も大いに盛り上がった。

 「市民参加型の、顔の見える企画をしたい。もちろんそれは私たち丸由社員も同じ。お客さまと一緒に楽しみながら、愛着が湧く百貨店にしていきたいですね」

 もう一つのキャッチコピーは『焦らず、まっすぐ、変わります』。〝街の顔〟となる百貨店へー少しずつ、少しずつ、みんなで作っていく。

丸由百貨店

鳥取市今町2-151

TEL: 0857-25-2111

営業時間: 10:00〜19:00 (元旦を除き、休まず営業)

      トットリプレイス

      5階 9:00〜19:00

      ※予約がある場合は除く

      ※KAENのみ23:00まで(月・火定休)

      屋上 9:00〜19:00

Instagram: oyou_tottori

Facebook:丸由百貨店

LINE:丸由百貨店

写真撮影・文/藤田和俊(※写真撮影時のみマスクを外していただき、感染症対策の上取材を行っています。)